平成16年に厚生労働省が集計した国民生活基礎調査によると、
我が国の有訴者率上位5症状で最も訴えの多かったのは女性で「肩こり」
男性でも腰痛についで二番目に多い事がわかりました。
更に欧米人には肩凝りがないと言われていましたが
「首の凝り」または「僧帽筋の筋肉痛」として表現され眼精疲労とともに増加傾向にあるようです。
欧米人にとっての「肩」は肩関節の周りに限られるそうです。
では普段、私たちが口にする肩凝りってどんな症状をさすのでしょうか?
肩凝りは「後頸部から肩、および肩甲部にかけての筋肉の緊張感を中心とする
不快感、違和感、鈍痛などの症状、愁訴」と定義づけされています。
ただし、肩凝りに隠れて重篤な病気が潜んでいる事もあるので注意が必要です!
私達の祖先は約100万年前に4足歩行から2本足起立歩行になり
、大きな脳と自由に動く両腕を獲得し現在の発展を生みました。
しかし、結果として私達の体は様々な矛盾を抱えるようになり、
肩凝りや腰痛もその一つと考えられています。
例えば腕の重さを6kgと仮定すると、両方で18kgもの重さが肩にかかり、
更に約4kgの頭の重心は、脊柱に垂直にはかからず、やや前方にあるため肩や背中の筋肉に負担がかかります。
特に前かがみの姿勢においては、負担も倍増してしまします!
肩周辺の筋肉は姿勢の維持と腕の動きに大きな役割を果たしています。
背側で首と肩をつなぐ役割をしているのが僧帽筋、肩甲挙筋、大・小菱形筋と呼ばれる筋肉です。
これらの筋肉は首・肩の様々な動きをコントロールすると同時に頭と腕という重荷を支えなければならないのです。
・・・なんだか肩が凝って当然という感じですね。
では、実際にはどんな症状がでるのでしょう?
いわゆる自覚症状を列挙してみます。
- 重圧感・不快感・軽い痛み・こり感(頚項部から肩甲上部または肩甲間部)
- 上肢のしびれ
- 精神症状の増加(感情が不安定・不眠・集中力の欠如・記憶力の低下・鬱)
- 胸部絞扼感
- 緊張型頭痛・便秘・下痢・食欲の低下・吐気・眼精疲労・咽喉部異常感・狭心症様の痛み・自律神経症状
重症になればなるほど筋肉の硬直が血行障害をおこし、更に末梢神経を傷つけ痛みを伴うようになり精神症状も増悪します。
不自然な姿勢をとるなど血流を阻害し筋肉を緊張状態(収縮)に強いると
筋肉に疲労物質がたまると筋肉は固くなり、コリやだるさを感じてきます。
ビタミンB1(チアミンとも呼ばれ水溶性のビタミンで豆類、肉類、特に豚肉の内臓に多く含まれ、
糖質のエネルギー代謝に必要です。)
やクエン酸(ミカン、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類に多く含まれ、乳酸の再エネルギー源化に必要です。)
を摂取しストレッチを行うなど疲労物質の蓄積を予防しましょう。
筋肉が固くなると、血管が圧迫されて血行が悪くなります。
血行が悪くなると、疲労物質が取り除かれなくなり、
ますます筋肉が硬直します。また血液循環が悪いために冷えも伴います。
ビタミンE(トコフェロールとも呼ばれ脂溶性のビタミンで、植物油やナッツ類に多く含まれ、
抗酸化作用とともに末梢の毛細血管を広げる助けをします。)
を摂取し入浴(半身浴より肩まで浸かる方が効果的ですが、心臓が悪い方は注意が必要です。)
など血行を改善するよう心がけましょう。
硬くなった筋肉は、さらに末梢神経を圧迫します。末梢神経は「痛い」「しびれる」といった刺激を伝えていますので、
末梢神経が圧迫されたり、傷ついたりして刺激を受けると、そこに痛みやしびれを感じるのです。
痛みやしびれは、末梢神経の状態が悪化した証拠です。
ビタミンB12
(コバラミンとも呼ばれ肉類、魚介類を摂取する事により微生物によって生成され、神経の機能維持にも関係しています。)
と葉酸が、タンパク質やリン脂質を体内で合成させて、末梢神経に補充して正常な状態にします。
筋肉は1つの固まりでは無く細かい筋繊維が集まり、それを筋膜が包んでいます。
筋繊維の中の血管が圧迫→血液循環が悪化→疲労物質の蓄積→神経刺激→凝りに発展していきます。
筋肉は、緊張させたりゆるめたりすることで、動脈や毛細血管の血液の循環を助けています。
ところが、同じ姿勢や無理な姿勢を長時間とっていると、筋肉の緊張ばかりが続いて、
筋肉の血行の流れが悪くなり、疲労物質がたまり神経を刺激し、凝りや痛みを感じるようになります。
また、目を酷使している人は要注意!視神経と肩の神経は非常に近い場所にあるので影響を受けやすく、
目を使いすぎると肩凝りは悪化します。また見るために無意識の内に無理な姿勢をとっていたりするため
眼精疲労と、頭痛と肩こりがつながりが連動して起こることも多いといわれています。
痩せすぎ・肥満気味・なで肩の人は、肩こりを起こしやすいといわれています。
体型的に、肩の筋肉に負担がかかりやすいためと思われます。
緊張したり、悩んだり、怒りなどを感じているときは、交感神経が優位になり
血液の流れが悪くなると言われています。ストレスなどを感じやすい人、
緊張を強いられる仕事をしている人は、リラックスする時間を作り
自律神経の調節がスムーズに行えるようにしましょう。
気温が下がると筋肉が収縮し血液の流れが悪くなる上、
人は寒さを感じると肩をすくめ身体を固くし、筋肉を緊張状態にするために血行が悪くなります。
特に冷え性の人は抹消の循環が悪く血液による熱交換が行われ難いため
体を動かし筋肉のフォームアップをしましょう。
女性の筋肉の直径は男性よりも細く、筋力も弱い上、
柔軟性が高いため靭帯や関節が伸びすぎて筋肉や脊柱に負担がかかります。
更に女性は「なで肩」が多いため、神経叢が圧迫されやすく頸肩腕障害も多いと言われています。
頭部を動かさずに一定の姿位で行う仕事、例えばコンピューターを使う作業や手先で細かい作業を行う方は
肩周囲の筋肉に負担がかかります。
特にノートパソコンは無理な姿勢を強いられ、頸椎を支える筋肉にも絶えず負担がかかります
- 運動をした後に左肩が凝り重だるい感じ
- 狭心症(心筋に酸素を供給している冠動脈の異常による一過性の心筋の虚血のために狭心痛などの症状を起こす虚血性心疾患の一つです。)の可能性があります。左肩に凝りや痛みを感じるとともに呼吸困難
・息切れ・発汗がでる場合は直ぐに専門医にご相談して下さい。
- 興奮すると首の後ろから両肩にかけて凝りを感じる
- 血圧が上がっている可能性があります。とくに肩凝りを感じた時に肩を動かすのではなく胸郭を大きく広げてるくせのある方は、無意識の内に心臓ポンプの圧力を
下げようとしている動作の可能性があります。定期的な血圧のチェックをしてみてください。
- 片側の肩が凝り痛む。同じ側の上まぶたが垂れ下がってきた
- 肺の頂上の肺尖部(眼球交感神経がとおる)にできる肺がん(パンコースト腫瘍)の疑いがあります。
一度、専門医にご相談して下さい。
- 片側の肩が凝る。肩を動かすと痛みが生じる
- 肩関節周囲炎、いわゆる五十肩の可能性があります。
- 暴飲暴食した後に右肩が凝る。みぞおちの右側に鈍痛
- 慢性胆嚢炎の可能性があります。急性胆嚢炎では発熱、腹痛、黄疸の症状がでやすいのですが、慢性だとまったく症状の出ない方もいらっしゃるので注意が必要です。
- 入れ歯をしてから肩が凝るようになった
- 歯の噛み合わせが悪いための肩凝りは原因を除去しないといつまでも症状が残ります。
また、噛み合わせの違和感は一ヶ月もすると無くなり他の箇所に負担がかかるようになる為、
違和感があるうちに歯科医院でご相談して下さい。
- 肩が凝り肩から腕にかけてしびれもある。電車のつり革を持つと症状が悪化する
- 胸郭出口部で、周囲の筋肉の異常などが原因で腕神経叢が圧迫されて起こる胸郭出口症候群の可能性あります。
整形外科か神経内科にご相談して下さい。
- 肩が凝り肩から指先にかけてしびれもあり全身の広範囲に疼痛がある
- 線維筋痛症の可能性があります。特に睡眠障害・胃腸症状・うつ状態・慢性疲労症候群を伴う場合は軽症の膠原病や,膠原病の予備群の場合もあるので
血液検査などは確実におこなったいいかもしれません。リウマチや膠原病の専門医にご相談して下さい。
同じ姿勢を続けず、1時間に数分間は、休憩して、体を動かす
軽いストレッチや体操(肩の上げ下げ、首をゆっくりと左右に倒す)
筋肉を動かすと、ポンプ作用で血液か流れやすくなります。
大切なのは「凝りを感じる前に運動をすること」です。
もちろん筋肉トレーニングも効果的です。(腕立て伏せなど)
またシャワーだけではなく入浴するなど血行を促しましょう。
マッサージは強すぎると筋肉を傷めます。(特に感覚のなくなっている方は気をつけましょう!)
そうすると筋肉の炎症が瘢痕治癒となり筋繊維自体が硬い伸縮性の乏しい繊維になってしまいます。
肩が凝りにくい姿勢とは、肩の力を抜き頭の位置を5センチほど上に引き上げる気持ちで顎をひきます。
最初は逆に疲れますが、常に正しい姿勢を心がける事でサポートをする他の筋肉が鍛えられ楽に正しい姿勢が取れるようになります。
女性は、ショルダーバッグのベルトが落ちないように無意識のうちに肩に力が入ってしまうため、
左右交互に持つよう心がけてください。また、リュックタイプは締め付け過ぎないようにきちんと調節してくださいね。
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